レストランで学ばせていただいたことが沢山あるのですけど、ふと3つ思い出したので書きます。取り留めないですけどお付き合いくださる方はよろしければ。
1、命をかけろ
「サービスのチカラ」に書きました、遠山さんの言葉です。そう、自分からしたら何度も何度も行なっている日常的なことでも、お客様からしたら初めてだったり一生に一度だったりする。本気じゃないのは伝わるしお客様に失礼ですよね。ほんとそう。毎回、一生に一度だと思って、命をかけて授業をしていきたいです。
2、殺人犯になるよ
これはオザミで、当時店長だった小松さんか、社員の石井さんか…ごめんなさい、あやふやなんですけど、お二人のどちらかに言われた言葉です。
(※2020/02/01追記:小松さんのお言葉は「命を預かる仕事」でした)
私の記憶も怪しいのですけど、たしか、お客様がトマトかナスがお苦手だったんですよね。伺ってたのに、あるまじきことに間違って、入っているものを持っていってしまったんです。すごく怒られました。例えば重度の蕎麦アレルギーの方に間違って蕎麦粉の入っている料理を出したら、死んでしまうことだってある。そうしたら間違えましたじゃ済まないよ、きみは殺人犯になるんだよ、と。おっしゃる通りですよね。今もワイン会やクラス会等で、苦手な食材のある方は慎重に覚えて、極力お店に対応していただけるようにしています。
ちなみに、アレルギーじゃなくて「お苦手」をどこまで尊重するかは、飲食関係の方々の中でも多様な考え方があるかもしれません。いずれにしても私が働いていたそのお店では、アレルギーであろうと好き嫌いであろうとなんであろうと、NGとお客様が仰った食材に関してはきっちりと確認し、避けるまたは別のものに変更することを徹底していました。個人的には、その姿勢がすごく好きです。恥ずかしながら私も苦手な食材が一つあり、レストランで「アレルギーではないけど小さい頃から苦手なので、もし可能なら別のものに変えていただけるとありがたいですのですが」とお願いすると、極稀に「アレルギーじゃなくて単に苦手程度なら我慢してよ」という主旨のことをお店から言われることがあります。勿論こちらのわがままだと重々分かってはいるものの、時間とお金を使って、食べたくない苦手なものを我慢して食べるというのは、もし、しなくて済むならそのほうがありがたいので、そこら辺を寄り添って柔軟に対応してくださるお店は本当にありがたいなと思います。
そういえば、上記のように「アレルギーではない」というと、お店によっては軽視されることが稀にあるので、「アレルギーということにすれば良いじゃん」と言う方もいらっしゃいます。でも、もしアレルギーなら、ただその食材を出さなければ良いという話ではなく、場合によってはベースの出汁や調理器具等まで全て他の料理とは別にしなければいけないので、大ごとなんですよね。アレルギーだと伝えると、たしかにちゃんとやってもらえるし話は早いのですけど、混んでいる時などは相当な負担になると思うので、もし本当はアレルギーじゃないならお店がかわいそうなので「アレルギーではない、あくまで苦手なだけ」「出汁までは気にしなくて大丈夫」などといってあげて欲しいなあと思います。
と、同時に、「お苦手」を軽視するサービスマンやシェフがいると、アレルギーでないのにアレルギーだというお客様の存在を誘発してしまう可能性があるのではないかと思います。できる範囲で、もちろんお店の事情があると思うので本当にできる範囲でいいので、お苦手も軽視せずに尊重してあげてくださると嬉しいなと思う今日この頃です。
3、日本人同士だって失礼でしょう?
グローバルダイニングの時の上司の、ネッド・グッドウィンMWの言葉です。私がシェフソムリエとしてネッドさん直下のお店に勤務を始めた時は、前任のワイン担当の方がいらっしゃらなくなって結構な時が経っていたので、在庫やワインリストが色々と合っていない状態でした。当時の自分のできる範囲で膨大な棚卸をして、ワインリストも全部調べて改善したつもりだったのですけど、そもそも語学センスもなく慣れていなく、今思えばスペル間違いが沢山ありました。そして、こう言われました。
「たしかに前よりは随分マシになったけど(という優しいクッション言葉をいれてくれつつ)、なぜ日本人の作るワインリストはこうも間違いが多いのか。日本人同士だって取引先の会社名や人の名前を間違えたら失礼だろうに、なぜ扱っているワイン名や造り手の名前は、LとRとか、アクサンのあるなしとか、そういう細かいところの徹底がなかなかできないのか」
「でも、ちゃんと全部輸入元資料調べました」という、今思えば申し訳ないくらい稚拙な口答えをしたのを覚えています。ああ。。。
輸入元の方々を悪くいうつもりはまっったくないのですけど、輸入元資料自体が間違っているということも、あるのですよね。全部原語で調べなさい、と。おっしゃる通りです。
日本人同士でも、ハギワラさんでもオギハラさんでもいいじゃんとか、ないですもんね。失礼ですよね。よくある間違いだからとか、些細な違いだからいいじゃんとか、そういう問題でもないですしね。
それ以来、特にスペルには気をつけるようになりました。おかげさまでADV受験テキストの校閲の仕事もありがたく取り組ませていただいています。だって、現地の方々に失礼だもんね、間違ってたら。って、自分の資料も含めてまだまだ気づけないところもあって偉そうなこと言えないんですけど?精進します。
スペルミスといえば…そういえば以前、夫と行った某有名老舗レストランで、こんなことがありました。失敗談です。
素敵なお店ですし、わくわくしながらワインリストを拝見したら、そのネッドさんに怒られた時の私と同じくらい、多くのスペルミスがあったんです。
そういうとき、どうします?みなさまだったら。
ね。特に私は近年校閲をしているので、余計に気になっちゃったりして。うーん、気になるけど、言ったら単に「うるさい客」みたいになっちゃうかなぁ。そんなつもりじゃないんだけどなぁ。
ちょっと悶々としつつ、悩んだ末、お料理は美味しくて、もしかすると海外の生産者の方々もいらっしゃることがあるんじゃないかな?と思うような雰囲気の良い老舗ですし、まだ若いソムリエさんだったのでこれからだと思って、応援の意味で言葉を選んで伝えることにしたんです。
あの、全然クレームとかじゃなくて、もしよろしければ…ちょっぴり、スペルが違うかもしれないですよ、これとか、それとか、あれとか、と。
そしたら。
「え?輸入元資料コピペしたからあってると思うんですけどね」
あー。昔の私…笑
あくまで楽しく食事をしに来たのであって、このお店のコンサルを仕事として行なっているわけでもないですし、そこでやめようかと思ったけど、でもこの方やお店の今後のためと思って、ちょっと勇気を出して、「私も昔上司に沢山怒られて教わったのだけど、輸入元資料も違っている場合があるから、手間がかかるけど一つひとつ生産者名やワイン名を調べた方がいいですよ」、と言葉と口調を慎重に選んで申しましたら。
「はあ、そうっすか」
と言われて、行ってしまわれました。
笑いを堪えている夫。
「あのこ、一文字もメモすら取らなかったね。全く直す気ないよね?」
うん。。。そうだね。。。。単なるクレーマーだと思われて終わっちゃったみたいです。私の伝え方がイマイチだったんだと思います。相手のためと思うなら、ちゃんと聞いてもらえる伝え方をしないとですよね。はぁー。ダメだったなぁ。。。精進します。。。
そんなわけで。今、現場に立っていらっしゃる若いソムリエさんでこれを読んでくださっている方がいらっしゃいましたら、考え方は色々あると思いますけど、生産者の皆様へのリスペクトがあるならスペルはちゃんと調べて、もしもいつかご本人が来店されても失礼のないようなワインリストにした方がいいと思いますよ。もし自分だったら、田中なのに中田って書かれていたらちょっと残念だもんね。ご本人じゃなくても、最近は詳しいお客様も多いですしね、と、思うのであります。
そして私はもっと伝え方の練習をしよう。これだいじ。
そういえばネッドさんで思い出したのですけど、講師になりたての頃に、たまたま何か用があってネッドさんとやりとりをしていたら、なんと今たまたま日本にいらっしゃるということで私の授業に顔を出してくださったのですよね。しかも、たまたまオーストラリアの回だったんです。よく覚えてます。まさかオーストラリアのMWの前で、オーストラリアのワインの講義をすることになるなんて。正直、超、やりづらかったです。MWのネッドさんが来てくださるのはみんなも喜んでくれるし嬉しいのだけど、自分の知識や経験が浅いから気まずくて。自分が至らないばかりに、気まずそうに講義して(そういうの伝わると思う)、ネッドさんにも受講生の皆様にも申し訳なかったなぁと今でも思います。まだまだ勉強不足だけど、でも今なら、自分が至らなかろうがどうであろうが、今の自分のできる全力をぶつけることが聞いてくださる方々への礼儀だと思うので、躊躇せず全力で行けるんですけどね。当時は無理でした。苦い思い出です。
でもね。不思議なもんで。慣れでしょうかね??今は、自分よりもその分野に詳しい受講生がいらっしゃると、逆に安心します。もし違ったら直してもらえるし良かった!!ありがたい!!と。なので、もし私の授業で「あれ?」と思ったら遠慮なく言ってくださると嬉しいです。私と、聞いてくださってるみんなのために。指摘することの気まずさ、面倒臭さ、慎重に伝えたのに相手に届かなかった時の切なさ、よくわかってますので本当に感謝します。
というわけで、本当にとりとめもないんですけど、読んでくれてありがと!!
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