ペアリングについて思うこと

お料理とワインの組み合わせに関して、最近思うことがあったので書きます。

マリアージュ?ペアリング?

ワインの世界も共通語がフランス語よりも英語になってきているということで、近年の日本のソムリエ協会の大きな流れとして、フランス語に傾倒せずに英語を尊重することも増えてきましたよね。

その流れで、昔は「マリアージュ」と表現される方が多かったけど、昨今は「ペアリング」と表現される方が多くなってきたように感じます。

マリアージュ=結婚は、離婚もありますが、ペアならいろんなペアの形がありますもんね。笑

個人的には、ペアリングでもマリアージュでもどちらでもいいと思っています。みなさまそれぞれが、しっくりくる言葉をつかえばいいでしょう。

ただ、勉強不足な私は、ひとつ個人的に不思議だなぁと思ったことがありまして。

日本のシェリー業界の方は、もちろん人によるんですけど、結構な高確率でマリアージュとおっしゃるように感じるんですよ。

ちょっぴり不思議だなぁ、と思って。

シェリー業界の方って、昨今はソムリエ畑も多くなってきましたが、全体としてどちらかというとバーテンダー畑の方が多いと思うんです。なのでワイン業界と異なり、言い方悪いですが「やっぱりおフランス最高」みたいな方はあまりいらっしゃらないはず。しかもシェリーは、そのシェリーという言葉自体が英語であることからも分かる通り、イギリスの影響が濃いわけですよ。

シェリー業界の方には、英語のペアリングの方が馴染みがありそうじゃないですか?なぜ、わざわざフランス語のマリアージュを好んで使っていらっしゃる方が多いんだろう??って、疑問に思いました。

そこで、シェリーのボデガで働かれていたしぇりークラブのももこさんと、今私のワインのクラスにSanlúcar de Barrameda出身のスペイン人の男の子がいるので、聞いてみました。

そしたら。

お二人ともおっしゃっていたのは、「スペイン語でもヘレスでも結婚はマリアージュと非常によく似た言葉で表現するし(maridaje)、料理とワインのペアリングのことも実際にマリアージュと言う」と。

そして、銀座しぇりークラブのシェフの中村さんや、そのサンルーカル出身の男の子が、全く別の機会に伺ったのですけど、お二人とも同じようにこう仰っていました。

「ペアリングはただ合わせるということ。マリアージュはもっと深い意味がある(相乗効果でよくなることを指す)」と。

なるほど。結婚は、ただのペアリングよりももっとすごいものなのだ!ということですよね。そのロマンスを大事にする感じがラテンっぽくて(?)素敵だなぁと思いました。

これは、諸説あるのかもしれません。ただ、少なくともヘレス周辺ではそう考える方が結構いらっしゃるんだと思います。

ワイン業界では「ペアリング派」が多くなってきて、それは悪いことでもないと思うけど、「最近はマリアージュなんて表現は古いんだぜ」みたいなやりとりをたまたま見かけたので、それはいろんな考え方や個々のお好きな表現があっていいし、どっちでもいいんじゃないの?ペアリングと一緒で絶対の真理はないんじゃない??と思う今日この頃です。

飲むのが先?食べるのが先?

あまり良い出し方ではないと思うので店名等はぼかしますけど、以前、某人気のお店に初めて、夫と行ったんですよ。おすすめのコース料理とペアリングをお願いしました。私たち夫婦は基本的になんでもありがたいし美味しいねというたちなのですけど、その時は珍しく、「お料理はとても美味しいけど、なんだかペアリングで出してくれたどのグラスワインもいまひとつ強くて合わないね…もったいないね…」と、残念ながら夫婦揃って思う結果になってしまいました。

ところが。

まさにそのお店のオーナーソムリエ?さんが開催されているペアリングのセミナーがあり、参加された方が、こうおっしゃっていたんです。そのセミナーでは、お口の中での瞬間のペアリングを大事にしていた、と。

ハッとしました。想定する口中でのタイミングの違いだったのではないか?と。

そもそも、ワインとお料理を楽しむ時、皆様はどれですか?

①ワインを飲んでから料理を食べる
②料理を食べてからワインを飲む
③料理を食べながらワインも同時に飲む

これも諸説ありで、「こうしなきゃいけない」「これが正しい」とかでなく、個人の好きなようにすればいいと、私は思っています。

ただ、古き良き?な、食事に長い時間をかける土地や時代の優雅な楽しみ方としては、「②料理を食べてからワインを飲む」が一般的と思います。余韻で楽しむ感じ。

(余談ですが、私は昔フランスで「日本人は食べながら飲むからグラスが汚れるんだ」とちょっと嫌そうに言われたことがあります?)

でも、忙しい現代人は、特に日本人は、「③料理を食べながらワインも同時に飲む」という方も多いのではないでしょうか。

だから、お口の中に食べ物の風味やかみごたえが多く存在するという前提でワインを選ぶことが、現代の日本流として多くなってきているのでは?と、ちょっと思いまして。

(ちょうど先日ご一緒させていただいた実践マリアージュ・オーストリア編で、岩井穂純先生が、なので食感で合わせることが重要だとおっしゃっていました。なるほど!)

私たち夫婦は、基本的に食べてから飲む、余韻で楽しむ派だったんです。だから、私たちが前述のお店で「ワインが強すぎる、いまいち合わない」と感じたのは、もしかして「食べながら同時に飲む」を想定して出されたペアリングなのに、私たちが「食べてから飲む」をしてしまっていたからではないでしょうか…?食べ物が口中に沢山あれば、それだけ香りも食感も強いので、ワインも強い方が合いやすそうですもんね。

もっと言えば、いまいち合わないと感じたなら、なぜそのペアリングで出してくれたのか、もっとソムリエさんとコミュニケーションをとって聞けばよかったですよね(初めて行くお店で、しかも忙しそうだと遠慮しちゃいますよね?)。ペアリングに関して、私たちのいつもの習慣的なタイミングと、ソムリエさんの考えるタイミングがちょっぴり違っただけかもしれないので、またいつか行ってみようと思います。

それと同時に、タイミングって改めて大事なんだなぁって、思ったんです。

ソムリエとして勉強するとどんどんロジカルな説明が欲しくなって、たとえば香りの成分のほにゃららが共通するからとか、食感のなになにが共通するからとか、なんなら原因物質名を出して語りたくなるじゃないですか。そのほうがもっともらしく聞こえるし説明しやすいし…笑

もちろん共通項をさがすというのは有効な手段で、たとえば超ベタなところで、

●柑橘とハーブの香りの爽やかなSauvignon Blanc&柑橘やハーブをあしらったサラダ

●黒胡椒の香りのスパイシーなSyrah&ペッパーステーキ

●樽とMLFのトースティーでクリーミーなChardonnay&焼いたお魚のクリームソース

などは、パッと考えただけでも合いそうですもんね。

だけど。

結局それも、「飲んでから食べる」「食べてから飲む」「食べながら同時に飲む」のどれなのかでも、ワインと料理のバランスが大きく変わってしまうと思うのです。

大前提として香りや食感などの共通項も踏まえた上で、「そのお客様がどのタイミングでワインとお料理を口にされているのか」も見てあげられると、さらにお客様お一人おひとりに合わせた的確なペアリングができるなぁと、思ったりします。

口中のタイミングだけではなくて、サーヴのタイミングも大事ですよね。お客様が求めているタイミングより早すぎても遅すぎても快適じゃない。「タイミング」。ほんと、深いテーマだと思う。

あと、思い出したんですけど、亡くなられたイタリアンの巨匠の内藤和雄先生が、10年くらい前の浦和のセミナーで、たしかこうおっしゃっていました。

「ヴォンゴレって、日本のは、白ワインが入っているでしょう。違うんです。むこうでは、白ワインはいれない。海水ごと入っているようなシンプルでしょっぱいパスタのヴォンゴレを、安くて酸っぱい白ワインで流し込む。これが旨いんです。最初から白ワインが入っていてバランスが取れた味わいのヴォンゴレに、現地の白ワインを合わせても旨くないんです。」

なるほど、と思いました。これは余韻で楽しむペアリングでなく、同時に食べて口中で完成されるペアリングですよね。酸味と塩味は王道の良い組み合わせですが、きっと現地の方々はそんな理屈抜きに昔から楽しまれていたんだろうなと想像し、なんだか微笑ましくなります。

恐れ多くも、私は食いしん坊なので様々な国のお料理を様々なワインに合わせる講座を多数開催しておりまして、よく思うんです。ロジックを考えることや勉強することも大事ですが、それだけじゃなくて、現地の方々がきっと理屈抜きに純粋に楽しんできたであろう、その気持ちや背景も尊重したいし、いつか全て現地に行って経験したいなって思います。夢が膨らみます。

どのタイミングで食べて飲むかや、どんなロジックがあるかは、場所や時代や人にもよりますよね。そんなこともあって、ペアリングも十人十色だから、さらに面白いなぁって思います。

ワイングラスについた唇汚れは指で拭う?

そうそう、これも料理とワインの話の時にしばしば話題になります。

私も、「ワイングラスについた汚れを指で拭うのがオトナの女のマナーです」、みたいな記事をネットで見かけたことがありました。でも「ワイングラスを指で拭うのは今夜はOKのサイン」みたいな記事も見かけたことがあります。面白いですね。

先ほどの「日本人は食べながら飲むからグラスが汚れるんだ」じゃないですけど、そもそも口中に沢山食べ物があって脂のついた唇でワイングラスに口をつけて、グラスのふちを汚すこと自体があまり格好良くないと思うので、ある程度お口の中のものがなくなってから、もし唇が汚れていたらナプキンで拭ってから、ワイングラスに口をつけるのがスマートでしょうね。

なので、そもそも「オトナの女」ならワイングラスにあまり汚れはつかないかもしれない。なんて私も美味しいと食べる飲むの無限ループが進んじゃってうっかり汚しちゃうけど…?

ちなみに、ワイングラスに口紅やリップグロスが赤くベットリつくのも、あまり美しくないし飲食店の方が洗うときに大変と思いますので、お化粧バッチリでデートに行っても、お食事の時は最初にナプキンで唇を押さえて口紅等を落ち着かせてからワイングラスに口をつけ、お食事後にお化粧室で塗り直すのが見た目にも飲食店さんにも優しいのではないでしょうか?

一皿一皿のペアリングも、長ーい歴史の中で見たら、近年の話ですもんね。ワインの有資格者や詳しい方々こそ、「こうしなきゃいけない」「これが正しい」に縛られすぎないで、学ぶことやロジカルな説明も大事だけどそれに頼りすぎず、もっと目の前のお客様をよく見てあげて、もっと自由に気軽に楽しんで欲しいなぁと思うのでした。

以上、これが正解!とかではなくて、個人的に思うことでしたー。

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富田葉子

富田葉子

フリーランスで、ワインやコミュニケーション、朗読などの講師業をしています。さらに素敵な人生のお手伝いができると嬉しいです♪

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