講師の責任

先日、受講生と話していて、「フランス至上主義でチリやオーストラリアなどのワインを下に見ている人、ワイン通やソムリエさんにもまだまだ多くいらっしゃるよね」という話題がありました。

 

そういう風潮を緩和していこうということで、今ソムリエ試験でこんなに試験範囲が広くなっているのではないだろうか、と思います。フランスだけが得意な人や、昔の知識のままの人は、だんだん通用しなくなっていくでしょう。

 

(大基本としてまずフランスを学習したほうがいいことや、フランスワインの素晴らしさに全く異論はありません)

 

フランスを筆頭に特定の産地に強い愛があるのは決して悪いことではないですし、むしろみんな大なり小なり「好きな産地」というのはあると思いますが、それゆえに他の産地を見下すような発言を無意識にしてしまっていることもあるかもしれないので、(もちろん私も含めて)気をつけていきたいですよね。

 

たとえば、私はシェリーの生徒さんによくこう申します。

 

「シェリーが好きすぎて、シェリーを褒めたいのはいいのだけど、何かや誰かを下げる言い方ではなくフェアな言い方で、褒めてあげて欲しい。」

 

たとえば「カリフォルニアの果実味や樽香の強すぎるワインと違って、ブルゴーニュはエレガントでいいよね」というのは、カリフォルニアの多様性を軽視していて、別に素直にブルゴーニュを褒めればいいのになぜカリフォルニアを引き合いに出して貶すのか、と思うじゃないですか。カリフォルニアにもエレガントなワインが上手な方、たくさんいらっしゃいますし。

 

それと同じで、たとえば「シェリーはスティルワインでは合わせられない食べ物にも合うから良い」などといってしまうと、スティルワインの多様性を軽視していて、それはシェリーの多様性を軽視している人とやっていることは同じではないか、と思うのです。

 

(スティルにも魚卵や珍味やスープなどに合わせられるものはいくらでもあるので、一括りにして合わせられ「ない」というのは言い過ぎだというだけです。スティルだと場合によっては合わせにくい、合わせるものを考えなければいけない、とかならいいと思います)

 

特定の分野に詳しい人の偏愛っぷり全開の語りを聞きたいのだ、という方も一定数いらっしゃいますし、私も自分の専門分野の場合は(それを期待されている部分もあるので)ある程度そのようにします。しかし、基本的にワインスクールで幅広く満遍なくお伝えする総合講座や受験講座を多く担当させていただいている身としては、そこは気をつけて、それぞれにきちんと愛をもって伝えていきたいです。特定の産地で熱量が減ったら、その産地に失礼だということを肝に命じたい。

 

ちなみに、最初の先生の影響って大きいですよね。先生の好き嫌いは伝わるので、だいたい最初に習ったワインの先生がフランス好きなら、生徒さんの多くもフランス好きになるでしょう。自分は今、Step1や受験クラスで「最初の先生」になることが多いため、責任重大だと思っております。特定の産地やワインに対して熱量の少ない伝え方をしていないか??その産地の方々に失礼な伝え方をしてしまっていないか??その造り手さんの想いを尊重できているか??いつも考えます。

 

ソムリエって、想いを伝える仕事だと思うんですよね。ワインに込められた造り手さんの想いや、お料理に込められたシェフの想いを、飲み頃または温かいうちに、お客様にとって一番心地よい形で伝わるようにする。そのためにたくさん勉強もするし、たくさん努力もする。ワイン講師も同じだと思っています。まだまだですけど精進します。

 

結局、どこも住めば都で、実際に現地へ行って生産者と交流すれば、どの産地も好きになるような気がします。人の好みには、最初の先生の影響、自分が行ったことあるかないか、触れる機会があったかないかなども大きくて、そこに優劣はないと思うので、馴染みのない産地を軽視する人にはなりたくないし、そういう人を生み出したくないと強く思います。

 

もっというと、上から目線で知識をひけらかそうとする「うざいワイン通」が生まれてしまうのは、講師の責任もあると思っています。道具を渡すなら、道具の使い方も教えないといけない。

 

もし「とみたに習った」と宣ううざいワイン通に遭遇したら、ご一報ください。猛省ののち、もう一度勉強し直してくださるように、誠意を持ってお願いにいきます。笑

 

資格だけ取っておしまい、な人を生み出してしまうのも、講師の責任だと思っています。授業の中で、資格を取った後にさらに深めたいと思ってもらえなかった、それ以上の興味を持ってもらえなかった、ということなので。

 

ソムリエ・ワインエキスパート受験講座は残り一ヶ月。7月20日から一次試験が始まります。みんなラストスパート、私もラストスパート。改めて、全ての方へ感謝して、今年の私が今できることを全力で行ないます。

 

頑張るぞっと。🔥

 

ホームページの更新が全然できていなくて、こちらの資料を楽しみにしてくださっている方には本当に申し訳ないです。ちょっともう、自分の今の授業でスケジュールが精一杯です。。。

7月末に受験関連の講座が終わると、作業時間がもう少し取れるので、JSAもシェリーも共有できるような資料が作れると思います。

 

がんばろうね。がんばるよ。

 

富田葉子

富田葉子

J.S.A.認定ソムリエ/ワインエキスパート WSET® Level 3 Award in Wines シェリー原産地呼称統制委員会認定 2014年最優秀ベネンシアドール JCAAコミュニケーション能力検定1級 日本滑舌能力検定協会認定講師(滑舌能力検定1級) 日本朗読検定協会認定講師(准プロフェッサー) レストラン勤務時代にネッド・グッドウィン MWの元で働き、ワインの魅力の虜になる。ワインの勉強は生粋のアカデミー・デュ・ヴァンっ子で、アカデミー・デュ・ヴァンが大好き。 みんなが仲良くなれる優しい雰囲気、聞き取りやすい講義と分かりやすい資料が特に好評。試験講座受講生の合格率も高く、「暗記こそ心で伝える」をモットーに、どこまでも寄り添って全員を合格へ導く。 15年間シングルマザーの経験があり、近年まで自身が「家事育児を両立し勉強もしながら忙しく働く母ちゃん」であったことから、限られた時間でも楽しくしっかりと身につけていただくことに心血を注いでいる。受講生との交流を大切にし、クラス会も活発に開催。 近年は滑舌能力検定や朗読検定の講師資格も取得し、ただワインに詳しいだけの講師ではなく、伝え方のプロフェッショナルでもありたいと日々努力を続けている。

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